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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「その龍巻や手下どもは、にわかに船をだすことになって、おまえをここへおき去りにしていった」

「すると、わたしを餓死させる気だったんだね。呂宋兵衛さま、とにかく早くだしてくださいまし」

「よし、そのかわりにこれからさきは、おれのために、火の中へでも水の中へでも飛びこむだろうな」

「ごめん、ごめん。わたしはもう大きな慾のない身だから、また裾野で、蚕の糸でものんきに引きたいよ」

「ふん、それじゃ、いッそ、死ぬまでこの穴蔵で隠居をしていろ。たぶんもう二、三年は、この屋敷の戸を開けにくる人間はないはずだから」

呂宋兵衛が、もどりかけると、蚕婆は悲鳴をあげた。いやおうなく、いろいろな誓いを立てさせられて、そこから助けだしてもらうと、婆は、頭にくろい頭巾、身に黒布をまとわせられて、あたかも女修道士のような姿となり、呂宋兵衛のあとからあてもなくついていった。

それから数日ののち――

角鹿の浦から十六、七里、足羽御厨の北ノ庄(今の福井市)の城下に、ふたりの偽伴天連があらわれて、さかんに奇蹟や説教をふりまわしていた。

と、ある日である。濠端にたって、なにやら祈祷をささげている伴天連をみかけて、美しい夫人が鋲乗物を止めさせた。