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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
あること、――かぎりもなくならべたてる。
秀吉は、フン、フン、フン、で、聞くことだけは聞いている。
さてと呂宋兵衛、まだなにかいうつもりだ。
「さてこのたびのご拝謁に、なにがなよき土産ともぞんじまして、上洛のとちゅう、命がけでさぐりえましたのは柴田勝家の攻略、まった北庄城の縄ばり本丸外廓、濠のふかさにいたるまでのこと、それを密々言上いたしますれば、ちかきご合戦はご勝利うたがいもなきこととぞんじまする」
と、蚕婆にさぐらせた評定のもよう、じぶんがしらべた砦の秘密など、得々然とかたり出した。
いま、勝家と秀吉の仲、日ごとに険悪となりつつあることは天下の周知。さだめし、秀吉が目をほそくしてよろこぶだろうと思うと、呂宋兵衛がしゃべっているまに、
「うッははははは」
と腹をおさえて笑いだした。
「呂宋兵衛、柴田の内幕話ならもうやめい」
「はッ」とかれは目をぱちくり。
「仰せにはござりますが、勝家一族が、ご当家を袋攻めにせん奇陣をくふうし、雪解けとどうじに出陣の密策をさぐってまいりましたゆえ」
「わかった、わかった。そちの申すのはこれであろう」
座右の文庫から、むぞうさにとりあげて、呂宋兵衛のほうへみせた書類! ヒョイと仰ぐと、いつぞや、北庄城の一室で、納戸襖から合図されて手へわたした、あの攻軍の秘帖だ! あの手が秀吉だったの