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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「その口を忘れまいぞ」

きッと、半身をつきだした伊那丸、針葉樹の木洩れ陽を、藺笠としろい面貌へうつくしくうけて、

「なんじはさいぜん、和田呂宋兵衛の家来じゃというていばっていたの?」

「あ……あれは」

「いや申した! たしかに聞いた」

「いいましたにそういございませんが、じつは、こ、心にもないでたらめごと」

いいかけるとあとから、忍剣の鉄杖のさきが背なかへ穴があくかとばかりドンとついて、

「このうそつきめが。呂宋兵衛の部下なるがゆえに、ことわりなしに祭をもよおした神主をこらしめるとか、かけ合うとか、ほざいていたではないか。若君のおしらべにたいして、寸言たりともあいまいなことを申すと、いちいちこれだぞ」

も一つ、ドンと食わせる。

「ウーム、フフフ、痛うござる、痛うござる」

「痛かったら申しあげろ」

「も、もうしあげます。まったく和田呂宋兵衛の手のものにそういございません」

「よくいった」

伊那丸は、うなずいて、

「して、その呂宋兵衛は、ただいま、どこに巣をかまえそしてなにをいたしておるな」

「秀吉さまのお気に入り者となりまして、天ヶ丘の寺領と、南蛮寺を拝領いたし、裾野いらいの一味、丹羽昌仙や蚕婆や燕作など、みなそこに住居をいたしております」