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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

伊那丸は心のそこで、高く高く、こう思い、こう誓い、こうさけんだ。

そして彼は、まもなく忍剣と龍太郎とをつれて、寒松院の松並木をたち去った。

かかるうえは一刻もはやく、小太郎山のとりでへ帰って、一党の面々にこのしまつをつげ、いよいよ兵をねり陣をならし、一旦の風雲に乗じるの備えをなすこそ急務である――と思ったのである。

伊那丸はほんぜんとさとった。大悟すれば、居士の謎めいた言葉も、おのずから解けたような心地がする。

会わねど、見ねど、さらば父上よ高野の道場にいませ。

――かれの心はすがすがしかった。

両童子空に闘う

一

いそぎにいそいで京都をでた伊那丸主従が、大津越え関の峠にさしかかったのは、すでに、その日の薄暮であった。

ここは木曾街道、東海道、北国街道、三道のわかれ道で、いずれを取るもその人の心まかせ。伊那丸は三井寺山のふもとに立ち、魚鱗の小波をたたえている琵琶のみずうみをながめながらかんがえた。

「忍剣、龍太郎。そちたちは、これから小太郎山へもどる道を、いずれにえらぶがよいと思うか」

「されば」と、龍太郎はすぐこたえた。

「北国路には、上部八風斎のつかえる柴田権六勝家が、厳重に柵をかまえていて、めッたな旅人は通しますまい、また、東海道はなおのこと、徳川家康の城下あり、井伊、本多、榊原などの、陣屋陣屋もござります