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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

抜けると、カーッと陽が照っていた。

小太郎山第一の峡!

孔雀の背なかを見るような燦鬱として真っさおな、檜林の急傾斜、それが目の下に見おろされる。

「ウム、ちょうど山の二合目だ」

目のくらむような陽をあびて、狼群のように、はいかがんだ人数、向こうに見える次の間道を目がけてゾロゾロゾロゾロはいこんだ。

さざえのなかをくぐるように、また二つめの間道をしばらくのぼると、山の五合目虚無僧壇とよぶところ、暗緑色の峡を隔てた向こうと、丸石を畳みあげた砦の石垣、黒木をくんだ曲輪の建物らしいのがチラリと見える。

だが、千仭の深さともたとうべき峡谷には、向こうへわたる道もなく、蔦葛の桟橋もない。

「オ、あれに三ツ目の間道がある」

伊部熊蔵がこういったので、みなそのあとからついていった。まさしく、こんどは間道らしい間道である。まっ赤な松明をふり廻して、シトシトシトシトいそぎだした。と――こんどは段もなく、井戸のような深い穴口へでた。そこに一本の鉄棒が横たえられ、蔓梯子がブラさがっている。

それより他にいきようはないので、いずれまた、段々と上へのぼることになるのであろうと、一同はそれにすがって下りていくと、その深いことはおどろくくらい――、下りるとまたうねうねと道々がある、まるで富士の胎内くぐりという形だ。