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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「はてな?」
と地中の闇を馳けながら、小頭の雁六は首をかしげた。
「妙だぞ、妙だぞ、いっこう上りになってこない、なんだかだんだん下る」
「いやそんなはずはない、こういううちに、しぜんと頂上のとりでの中にでるにちがいない」
と、伊部熊蔵はがえんぜない。ますます足を早めていった。
するといきなり眼の前に、ドウーッと真っ白なものが光った。青い光線がひえびえと流れこんできた。見るとそれは岸をあらう渓流である。岩をかんで銀屑をちらす飛沫である。
岩壁の一たんに、ふとい鉄環が打ちこんであり、環に一本の麻縄か結びつけてあった。で、その縄の端をながめやると、大きな丸太筏が三そう、水勢にもてあそばれてうかんでいる。
はてな? いよいよ、はてな? である。
熊蔵も雁六も、すこし道順がわからなくなってきた。まえには渓流、うしろは暗黒!
「ままよ。いくところまでいって見ろ。つぎには第四の間道があるだろう」
そう多寡をくくって、三そうの筏に飛びうつり、向こうへ渡ろうとしたのであるが、思いのほか水足がはやく、鉄環の縄をきるやいな――ザアッと筏は下流のほうへ押されてしまった。
そしてやっと、水勢のゆるい瀞へかかった時、向こう岸へはいあがって見ると、ああなんということだ!