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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「やッ、待って」

と竹童も不審のあまりその人々のあとを追って、

「あなたがたは?」

と、息をせいてきく。

走りながら、覆面のひとりが、

「竹童さま、お忘れか」

次にまた一つの顔がふりかえって、

「――お忘れか、お忘れか、虹の松原のお別れを」

さらに、足もやすめずまただれかが、

「わたくしたちは緋おどし谷にいた乙女のむれ!」

と明らかに名のった。

そういわれれば覆面ながら、一つひとつにおぼえのある顔。

「いつか、虹の松原で、竹童さまとお別れしてのち、里にかえって散りぢりになっていましたが、かねてのやくそく、わたくしたちの心のちかい、こよい外濠にあつまりました」

「深い話はしていられませぬ、一刻も早くあのお方を」

「咲耶子さまをお救い申しに」

「竹童さまもまいられませ」

「力をそえてくださいませ」

「仔細はあと――」

「かなたをさきに」

群れをくずして走ってゆきながら、こんな端的なことばを口々に投げた。

さては、小太郎山から手当されて、甲府の城下にはいるまえ、虹の松原で礼もいわず置きずてにして自分は馳けだしてしまった、あの、優雅にして機敏な少女の工匠たちであったか。

と知って。