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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
竹童はその意外さをよろこびもし、驚きもしたが、なにを話すまもない馳けながらのこと。
「おっしゃるまでもないことです。もともと、咲耶子さまが捕らわれたのは、わたしにも罪のあること、それゆえ自分もこの館に忍んでいましたが、ここで会ったのは神さまのお助け、およばずながら竹童も力を添えます」
これだけいって、腰の般若丸をひき抜いたが、その刀身は、いきなりまっ赤にひかって見えた。うしろの炎はもう高い火柱となっていた。
二
奥庭までは白壁門、多門、二ヵ所の難関がまだあって、そこへかかった時分には、いかに熟睡していた侍や小者たちも眼をさまし、警鼓警板をたたき立て、十手、刺股、槍、陣太刀、半弓、袖搦み、鉢ワリ、鉄棒、六尺棒、ありとあらゆる得物をとって、一時に、ワーッと侵入者のゆく手を食いとめにかかった。
血戦は開かれた。
もとより、人数のすくない少女たちのほうでは、初めからひそかに咲耶子を救いだす策略で来たのであるが、とちゅう、馬糧小屋にふしぎな煙がもれていたため、その疑惑にひまどって、ついに、こういう破目になったのは、まことにぜひないことであった。
及ばぬまでも、このうえは敵をむかえて、緋おどし谷で練りきたえた、胡蝶の陣を組みほぐしつ、糸を染めるほそい指に小太刀をにぎり、死ぬまで、戦うよりほかに道がない。