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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「たわけ野郎」
「ものもらい」
「ざまを見やがれ」
「くたばるまで蹴ころがしてやれ」
寄ってたかってなぐりつける、息杖や足蹴の下に、いつか神気朦朧として空も見えなくなってしまった。
築城の縄取り盗み
一
ここに六万五千人の人間が、地上に一個の建築をもりあげるため、蟻のごとく土木に蝟集している。
これが人間業かとおどろかれるような巨城。
もうあらかたできあがりに近づいて、秋晴れの空に鮮やかな建築線をえがきだしている。
なんとすばらしい城だろう。その規模の大きなこと、ローマの古城をもしのぐであろうし、その工芸美の結構はバビロンの神殿にもおとりはしない。
武将の居城として、こんな大がかりなものは、まだ日本になかった。いや、当時、海外から日本にきていて、この工事を見聞きしたクラセとか、フェローのような、宣教師でも、みな舌を巻いて、その高大をつぶさに本国へ通信していた。
そこは――摂州東成郡石山の丘、すなわち、大坂城の造営である。
城は本丸、二ノ丸、三ノ丸にわかれ、中央に八層の天主閣が聳えていた、二重以下は惣塗りごめ、五重には廻廊をめぐらし、勾欄には鳳龍の彫琢、千畳じきには七宝の柱、間ごとに万宝をちりばめてあおげば棟瓦までことごとく金箔。