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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
父は六臂三面の神よりも力づよき柱――、母は情体愛語の女菩薩よりもやさしい守り――その二つのものが人間には橋の下に生まれる子にもあるのを知った。
「だのに、なぜおいらには、それがないのかしら?」
この疑問がすすんで、竹童もいつのころからか、じぶんの父は何人か、自分の母はたれなのかと、人知れずしきりに思うようになっていた。
二
「それにおるのは竹童ではないか。竹童、竹童!」
不意に、かれの幻想とうつつな耳をさます声があった。
お時に親を問われて、夢でもみるように、なにかボウと考えこみ、石の狛犬とならんで指の爪をかんでいた竹童は、近よる足音にハッとして目をそらした。
――と、かれの顔いッぱいに、意外なよろこびにぶつかッた表情が笑いかがやいて、
「オオ、民部さま! や、伊那丸さまも」
と、手をあげて迎える。
森の小道でも抜けてきたか、とつぜんそこへ姿をみせた人々は、民部をさきに、伊那丸をなかに、うしろに山県蔦之助と加賀見忍剣のふたりをしたがえた旅装いの一行四名。
「竹童、よく達者でいたな」
と、蔦之助が手をにぎる。
忍剣も肩へ手をのせて、
「小太郎山の変いらい、そちの消息がたえていたので、若君をはじめ一党の人たちが、どれほど、しんぱいしていたかわからぬ」