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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

かれが一火流の手のうちを見せようとはかってした行為の目的はたっしている。

咲耶子のからだはかれに用がない。内心では、渡してやってもいいと考えている。

しかし、長安のほうに渡すのが至当か、五菩薩の仮名をつかってでてきた者にわたしたほうがいいものか、双方のあいだにはさまって、まったくとうわくの顔色だ。

しかも、五人の偽菩薩の顔色をジロリと見ると、もし自分が石見守に加担して、いな、と一言に突ッぱねれば、どういう手段にもうったえかねない底意がよめる。

そこは、一火もひとかどの武芸者、

(ウム、これは大難事、うかつに軍配をあげられないぞ)

早くもさっしたから、よけいにこの難問題の決断がつかなかった。

一方、群集のほうでは、矢来越しに遠見なので、こうした事情が、そこに起っているとはわからない。ただいつまでも試合場の中央が大きな空虚になりッぱなしとなって、人ばかり右往左往しているので、さかんにガヤガヤもめている。

すると、鐘巻一火。

そうほうの仲に板挟みとなって、ややしばらく、腕をくんでしまったが、やがて、大久保がたの者と忍剣たちの両方へ対して、

「お望みの咲耶子とやらのからだは、何時にても、苦情なくお渡し申すことにいたそう」