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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
どうだろう、蔦之助」
「すでに、豊臣家のほうにも打ち明けたこと、拙者も、名のって仔細はあるまいと思う」
小文治も同意した。
そこで一同は、作戦をこらすために、かたすみへ寄って凝議をしたうえ、おのおの国籍本名をあからさまに記入してやった。
(きゃつ、あれを見ると、きっとびっくりするにちがいないぞ)
こう思っていると、案の定、使者は五人の記名と姿とを見くらべて、がくぜんと目をまるくしたまま、あとの文句もいわず、幕のそとへ飛びだしていった。
さらに。それからかれ以上に仰天したのは、使者がもたらしてきたことによって、はじめてことの真相を知った大久保石見守であり、和田呂宋兵衛であり、そのほか徳川家に籍をおくものすべてであった。
「さては」と、だれの顔色もかわった。
「咲耶子をわたせと、けしきばんで、あれへなだれこんできた理由がわかった。多寡の知れた僧侶や浪人者と見くびって、わざと、家中の侍をださず、呂宋兵衛や吹針の婆をあの番組のなかにいれて翻弄してやろうと思ったのだが、そうと知ったら、もう一工夫するのであった」
と、石見守には、後悔のようすがあった。
けれど、すでに、時刻はせまる、検証の鐘巻一火は床几につく、見物は鳴りをしずめて立合いを待ちかまえている。