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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

の陣を組んでまもっている鞠を、どうして、気づかれずに自分の手へとってもとの場所へかえるだろうか。

「いざ!」

「目をかすめて、忍べるものなら忍んでみよ」

という風に、お小姓とんぼの面々は、ゆだんのない目をみはった。

両士は、サッと左右にわかれて、八門の陣のすきをうかがう。

――といっても、そこには木蔭があるわけではなく、身をかくす家があるのでもないから、もとよりどう手をくだす法もないらしい。

木隠が右へまわれば右へ、半助が左側をねらえば左側の目ばしこい小姓たちの眼が光ってうごく。

すると、菊池半助は、とつぜんとんぼ組の陣形のまわりを、疾風のようにぐるぐるまわりだした。

かれらはその迅さに目まいがしてきたように、ただアッ――と、あッけにとられている。その姿はいよいよ加速度に早くなって、ついには、小姓たちの目にも遠くからながめている人々の目にも、それが半助か、一片のくろい布がつむじ風でめぐっているのか、ほとんど目にもとまらないほど迅速になってきた。

それに、すべての者の視線がうばわれているまに、いままで、一方に立っていた木隠の姿がこつぜんと消えている。

「や、さては」