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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
そして、そのために、いまのような意外な勝敗が、なにびとにも気づかれずに信じられているのではないのかしら?
と――竹童はわれをわすれて、なお死人のごとく、印をむすんで、つッ立っている怪人呂宋兵衛の黒いすそへソロ、ソロ、とはいよっていった。
三
なんと久しぶりに見る憎悪の敵のすがただろう。
竹童の手は、無意識に、般若丸の柄をかたくにぎりしめていた。
たとえ、斃せないまでも、不意をうって、かれの邪法の気念をやぶってやろう。
そう無意識の意志がうごいていった。
そうして、気配をしのばせながら、足もとによりついてくる者があるのも知らないで、呂宋兵衛はいぜんとして目をとじたままだった。かれはかれじしんのむすぶ幻術の妖気に酔っているもののようである。
しめた!
竹童の胸は大きな波にあおられた。
だが、般若丸の名刀が、鞘を脱しようとしたしゅんかんに、はッと気がついたのは(血を見るなかれ)という御岳三日の神誓である。もしや自分の軽はずみが、伊那丸さまの身にめいわくとなってかかってはならないということだった。
といって、この怨敵を!
みすみす目のまえにこうしている一党の仇敵、咲耶子にとっては敵のこの悪魔を、なんで見のがしていいものだろうか。