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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
なんと毛なみの美わしい馬だろうと――それにはなみいるものが、ちょッと気をうばわれたが、よく見ると、名馬のはずだ、これは御岳神社の御厩に飼われてある「草薙」とよぶ神馬である。
しかし、徳川家の者や、諸藩のものは、この嶮路の遠駆けに、馬をひきだしてきた無智をわらった。
「どうだい」
と、嘲笑半分に、うわさするものがある。
「これから御岳の中腹まで降りて、渓谷をわたり、それから白鳥の峰の大鳥居までいってかえってくるという遠駆けに、いくら名馬の手綱をとったところで、しょせん、どうにもなりゃあしまい」
「まるで、山を舟で越えようというのとおなじ無謀な沙汰だ」
「しかし、あいつ、おそろしく自信のあるような顔をしているな」
「ふうていもかわっている、杣か、野武士か、百姓か、見当のつかぬような青二才だ」
「なにしろ、どう敗けるか、その敗けぶりをみてやろう」
小文治の耳にも、こんな悪評が、チラチラ耳に入らぬでもなかった。けれど、かれは黙笑している。うすら笑いすると、その頬には、ちいさな笑くぼができて、愛らしい若者だった。
三
一方。
これはまた、おそろしく雲の上でも飛びそうなすがたででてきたのは、早足の燕作。