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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「やあ、ごくろうさま」

小文治のすがたを見ると、町人らしく、腰をまげた。

ちょっと、いままでの試合と目先がかわったので、見物はよろこんだ。大きな弥次のこえが、高い樹の上ではりあげている。

「お役人さま、念のために、よくうかがっておきますがね」

と、燕作は、よくしゃべる。

「なんでござんしょうか――この遠駆けの勝負の眼目は、つまり、あの白鳥の峰の大鳥居までいって、さっきの遠矢を、一本ずつ持って帰ってくりゃあよろしいンですね」

「そうじゃ」

と、試合目付がそうほうへくわしく説明した。

「――それと、さいぜん、勝負あずけとなっている遠矢のあたりの証拠を持ちかえってもらいたい」

「ようがす、じゃ、あっしは、あの額のふちを引ッぱずして持ってくりゃいいんだ。そして、相手方より一足でも早く、この試合場へ持ってきて、それを検証の床几のおかたに手渡しすりゃあ勝ちというわけなんでございましょう。……なアんだぞうさもねえ、それならとちゅうで、さんざん煙草を吸って帰ってこられまさ」

と、浮ッ調子な町人ことばで、おそろしく大言をはいた。

小文治は、そら耳で聞きながら、一つかみ草をとって馬に飼いながら、ニコニコ笑っていた。