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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

それを他人に知られたら、ひきょうな立合いといわれて、徳川家の名をけがすことになるが、いまはそんなことを顧慮していることはできない。

ただ、なんでもかでも、早くかえり着くことにあせった燕作は、やくそくの道をふまず、沢をひだりにまわって、八町参道へ半分でぬけられる近道をいそぎだした。

「おう、しめた」

五

そこへ抜けてでると、さきにいそいでゆく小文治の騎馬すがたがすぐ目のまえに見えた。

にわかに元気づいた燕作が、一町半ばかり、死身になって踵をけると、こいつどこまで足が達者に生まれた男だろう、神馬草薙とほとんど互角な早さで、長くのびた燕作の首と、泡をかんだ馬の顔が、わずか一間か二間の差を、たがいに抜きつ抜かれつして、八町ばかりの坦道を、見るまに、二町走り三町走り、六町走り、アア、あとわずかと試合場の城戸まで、たッた二、三十間――。

わッーという声の波が、馬と人とを同時に抱きこんだ。

燕作は、かけ着いたというよりも、自分のからだを城戸のなかへほうりこんで、

「遠駆け一番!」

たおれながら腰の矢を高くさしあげた。

それがさきか、かれが次着か、ほとんど燕作のさけびと同時に、馬もろとも、おどりこんだ小文治の口からも、同じように、