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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「いや、はなさん。おれははなさん」

「なんで、おれのすることをさまたげるのだ」

「きさまは、その引っかかえている禅杖で、きょうの鬱憤を晴らそうという気だろう」

「知れたことだ。この晴れがましい、大講会の広前で、かたく、約をむすんだ試合ながら、さまざまに難癖をつけたあげく、その裏をかいて、咲耶子のすがたを隠してしまうという言語道断な行いを、だまってこのまま見て引っこめるか。――龍太郎! おぬしは退くなら、退くがいい、おれは徳川家の蛆虫めらを、ただ一匹でも、この御岳から下へおろすことはできない」

かれの額には、炎のような青筋がうねっていた。かつて、忍剣の形相が、こうまですごくさえたことを、龍太郎も見たことがないくらい。

「こらえろ! こらえてくれ、忍剣! この山の掟を知らぬか、兵法大講会三日の間は、たとえどんなことがあっても血を見るなかれという、きびしい山の禁断を知らぬかッ」

「ええ、もうその堪忍はしつくした。これ以上のこらえはできない」

「だからきさまの短慮を、伊那丸さまも民部どのも、へいぜいから心配するのだ。もしものことをしでかしてみろ、きさまばかりではない。