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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
二
おっしゃるとおり、御旗楯無の宝物は、石櫃におさめて、この湖のそこに沈めてあるにそういありませぬ」
「まったくそれにちがいないか!」
「神かけていつわりはもうしませぬ」
「よし、よく白状いたした。おお殿さま。ただいまのことばをお聞きなされましたか」
ちょうどそこへ、おくればせに着いた梅雪のすがたをみて、民部が、こういいながら馬上を見上げると、かれは笑つぼに入ってうなずいた。
「聞いた。かれのもうすところたしかとすれば、すぐ湖水からひきあげる手くばりせい」
「はッ、かしこまりました」
民部はいさみ立ったさまをみせて、郎党たちを八ぽうへ走らせた。まもなく、地理にあかるい土着の里人が、何十人となくここへ召集されてきた。そして、狩りだされてきた里人や郎党は、多くの小船に乗りわかれて、湖水の底へ鈎綱をおろしながら、あちらこちらと漕ぎまわった。
二
陸のほうでは穴山梅雪入道が白旗の宮のまえに床几をすえ、四天王の面々を左右にしたがえて悠然と見ていた。
と、かれの貪慾な相好がニヤニヤ笑みくずれてきた。――湖水の中心では、いましも鈎にかかった獲物があったらしい。多くの小船は、たちまちそこに集まって鈎をおろし、エイヤエイヤの声をあわせて、だんだんと浅瀬のほうへひきずってくるようすだ。