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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「竹童よ」

「えッ……」

見えぬ目をしばたたきつつ、かれは、じぶんの名をあきらかに呼んだ者を、だれかしらとあやしむように、両手でその人の衣服をなでまわした。

「あやまることはない、あやまることはない。他の者ならあぶなかったが、わしであったからまアよかった……」

「オオ!」

竹童は、こごえていた嬰児が、母のあたたかな乳房へすがりついた時のように、ひしと、ひしと、その人の胸にかじりついて、

「あなたは鞍馬のお師匠さま! オオ、お師匠さまではございませんか」

と、声もからだもふるわせた。

「わかったか竹童、いかにもわしは果心居士じゃ。ずいぶん久しく見えなかったのう」

「では、やっぱりお師匠さまでございましたか、ああ、おすがたを見たいにも、竹童めは、なんの罰でか、このような盲となってしまいました」

「竹童、目がつぶれたことを、おまえはそんなに不自由とおもうか」

「はい、伊那丸さまのおんために働くことはおろか、だいじな鷲をとり返すことさえできませぬ」

「そして、それを悲しいと思うか」

「お師匠さま。これがなんで悲しまずにおられましょう」

「まだまだおまえは修行が足りない。なぜ盲となったなら、心眼をひらくくふうをせぬ。