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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
そして、すぐにゴロリと横になって、手枕をかいながら、生意気そうな鼻の穴を宮内のほうにむけ、
「おじさん、いまおめえは、この向こうにはいっている竹童のところで、なにかコソコソ耳こすりをやっていたろう」
といった。
「ウム。おまえと仲をよくせぬかと、そのそうだんをしていたのじゃ」
「くそウくらえ――だれがあんなやつと仲をよくするもんか。おいらは徳川びいきだし、あの竹童ッてやつは、山乞食の伊那丸って餓鬼や、イヤな坊主に味方をしているんだ」
「ではどうもしかたがないな。……ふたりの気がおれて、仲をよくするというまで、この塔にはいっていてもらうよりほかに方法はあるまい」
宮内は竹童のたべた土鍋のからと、蛾次郎の食べたからを両手にもって、社家のほうへもどってしまった。
格子のすきまから、そのうしろ姿をみて、蛾次郎は声のあるッたけ悪たれをついた。
「やい、早くここをだしてくれよ。いッてしまっちゃいけないよ! やい神主! つんぼか唖かでくの坊か! オイきこえないふりをしてゆくない。オーイ、バカ神主め、おいらをいつまで竹生島へおいておくんだい。かえせ、帰せ、かえしてくれ! 帰さねえと、いまに弁天さまへ火をつけるぞッ!」