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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「やア……やア……やア奇態だ」
なにもかも忘れはてたようすである。あおむいたまま、いつまでも棒立ちになっている竹童の顔へ、上の梢からバラバラと松の皮がこぼれ落ちてきたが、かれは、それをはらうことすらも忘れている。
そも、竹童の目は、なんに吸いつけられているのかと見れば、じっさい、おどろくべき怪物――といってもよい大うわばみが、鞍馬山にはめずらしい大鷲を、翼の上から十重二十重にグルグル巻きしめ、その首と首だけが、そうほうまっ赤な口から火焔をふきあって、ジッとにらみあっているのだ。まさに龍攘虎搏よりものすごい決闘の最中。
「や……おもしろいな。おもしろいな。どっちが勝つだろう」
竹童おどろきもせず、口アングリ開いて見ていることややしばし、たちまち、鼓膜をつんざくような大鷲の絶鳴とともに、大蛇に巻きしめられていた双の翼がバサッとひろがったせつな、あたりいちめん、嵐に吹きちる紅葉のくれないを見せ、寸断されたうわばみの死骸が、バラバラになって大地へ落ちてきた。
それを見るや否や、雲を霞と、僧正谷へとんで帰った竹童。果心居士の荘園へかけこむがはやいか、めずらしい今の話を告げるつもりで、