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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
二
アア、いつおいらとめぐりあえるのかしら」
吹雪の空を見あげて、くろい大鷲の幻影をえがいたのは、法師野いらい、その行方をたずね歩いている鞍馬の竹童である。
信濃をこえて、飛騨を越えて、クロを尋ねつ冬にはいって、この大雪にゆきくれた竹童、腰に名刀般若丸のほこりはあるも、お師匠さまは尊いもの、クロはおいらのかわいいものとしている、あの鷲にあえざる心はさびしかろう。
二
あければ、天正の十一年。
本能寺の焼け跡にも、柳があおい芽をふいた。
都の春のにぎやかさ。ことに、羽柴従四位の参議秀吉が入洛ちゅうのにぎやかさ。――金の千瓢、あかい陣羽織、もえ黄縅、小桜おどし、ピカピカひかる鉄砲、あたらしい弓組、こんな行列が大路小路に絶えまがない。
戦があっても貧相でなく、新鋳の小判がザラザラ町にあらわれ、はでで、厳粛で、陽気で、活動する人気は秀吉の気質どおりだ。京ばかりではない、姫路へ下向すれば姫路の町が秀吉になり、安土へゆけば安土の町がそッくり秀吉の気性をうつす。
「ご前」
馬廻りの福島正則、ニヤニヤ笑いながら、秀吉の前へひざまずいた。京都の仮陣営、ここに天下の覇握をもくろんでいるかれ、飯を噛むまもないせわしさ。