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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三太郎猿はおうちゃくに、十兵衛の膝を拝借してもたれかかりながら、茶色の目をショボショボさせてながめている。

「十兵衛、どこかに、今宵お使番の方が見えておるのか」

「いや、さようなことは、表役人からもうけたまわりませぬが」

「へんなこともあるものじゃ――まさしゅうこれは家康公のお手紙で、おまけに今夕のお日附となっている」

「いかに早足なお使番でも、夕方からただいままでに、ここへ着くともうすのはふしぎなしだい。そして、御書の内容は?」

「わしに、御岳の軍学大講会の総奉行を申しつくるというご沙汰。それと、ご評議の結果、日取りその他の事項ご決定に相なったお知らせである」

「ほウ……してお日取りは、いつごろに」

「十月七日から九日までの三日のあいだ」

「昨年よりは五日おくれでござりますな」

「そうなるかな。当年、軍学兵法の講論、大試合に参加する諸家は、まずご当家を筆頭に、小田原の北条、加賀の前田、出陣中の豊臣家、奥州の伊達、そのほか三、四ヵ国のご予定とある。――だが、どうしてこのご状筥が、猿めの首に結いつけてあったのか。その儀、なんとも腑に落ちないことである……」

「もし……そのご状筥の紐のはしに、まだなにやら、紙片が結びつけてあるようにござりますが」