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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

愛の旅人

一

伸びあがってのぞくと、

「お地蔵さま、後生です」

「後生ですって、なにが後生なんじゃ。でておいでな、ここへ」

「それが、でられないんで、弱ってるんです」

「なんだ、しばりつけられているのか」

「ええ、ゆうべお館へ乱入した、あの狼藉者のためにしばられて、とうとうここで夜を明かしてしまったんで」

「おやおや、それはえらいお仕置を食ったな」

宮内は人のいい笑い方をして、石置場にしばられているかれの縄目を解いてやったが、からだが自由になったとたんに、蛾次郎は、礼の言葉なぞはとにかくというふうに、いきなり向こうの馬糧小屋の焼け跡へすッ飛んでいった。

なんですッとんでいったかと思うと蛾次郎、そこでまだ、カッカと余燼の火の色がはっている焼け跡にお尻をあぶって、

「オオ寒、寒、寒、寒。……ああ、あったけえ、あったけえ、あったけえ」

歯をがたがたと鳴らしながら、凍りきった血をあたためて、人心地を呼びかえすのだった。

そこへひょッこり、親方の鼻かけ卜斎が、桜雲台の方からもくもくともどってきた。

卜斎はジロリと蛾次郎の顔を見たが、べつに声もかけないで、菊村宮内のいる火のそばへよりながら、