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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

二

阿弥陀街道のながい半日に、かなり足の疲れをおぼえてきた宮内、

「おお、茶店があるな」

立場がわりに駒止めの杭がうってある葭簀掛の茶屋を見かけて、

「少し休ませてもらいます……」

と、なにげなく立ちよって、背なかの笈を床几の上へ安置すると、土間のうちで荒々しい人声。

「女だからって、油断もすきもありやしねえ!」

なにかと思って見ると、街道稼ぎの荷物持ちか馬方らしいならず者がふたり、黒鉄に毛をはやしたような腕ぶしをまくりあげて、

「――飛んでもねえいいがかりを吐かしゃあがる。だれがてめえのような女乞食のビタ銭を、掏ったり抜いたりするバカがあるものか、ものをぬすまれましたという人体は、もう少しなりのきれいな人柄のいうこッた、よくてめえの姿や商売と相談してこいッ」

おそろしいけんまくでどなりつけている。

そのふたりの毛脛のあいだにはさまって、土間へ手をついたまま、わなわなおののいている女は、坂東三十三ヵ所の札をかけ、膝のところへ菅笠と杖とを持った、三十四、五の女房である。

「いいえ、そうわるくお取りなすってはこまりますが、たしかに、駒飼の宿の辻堂で、ちょっと帯をしめ直しているあいだに、あなた方おふたりが、足もとへおいたわたしの金入れをお持ちになってかけだしたので、悪気はないほんのいたずらをなされたのであろうと、ここまで