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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
刑罰の千年山毛欅
一
さきに立って、自分のたまり場である幕のほうへみちびこうとすると、いまいましげに睨めつけていた大久保石見守が、
「まだ疑わしきふしがある。待て、咲耶子を渡すのはしばらく待て」
と、みれんらしくどなった。
蔦之助や小文治は、ふんぜんと色をなして、
「なに、このうえにも、なにか苦情があるというのか」
「おお、第一、あやしいのは額板。なるほど、白鳥霊社と彫ってあるにはちがいないが、はたしてこの矢あとが蔦之助の矢かどうか、それもにわかにたしかとはうけとれない。ことに、まだ大講会第三日の試合も明日にのこっていることゆえ、咲耶子の身を処決するのは、あしたにのばしてもさしつかえあるまい。そのあいだに、いま申した疑問の点をとうほうでもじゅうぶんに取り調べておくから、それまで待てと申すのだ」
いかにも無理な、智恵のない、いいぶんだ。
一火は、取るにたらないことばと聞きながして、さっさと引きあげようとしたが、徳川家のほうからは一刻ましに味方があつまって、わざとことをもつれさせるように、石見守の尾について、ごうごうと苦情の声援をあげだした。
「不当だ」
と、一火の肩をつく者がある。